「ヤツガシラの恋」は、ロシア革命後の国内戦の時代の物語。
空き家になった地主屋敷に白軍の中尉が住んでいるらしい。
屋敷の持ち主だった貴族が国外に去ってから、屋敷を囲む庭園は荒れ放題で雑草が生い茂っている。
その雑草の間に、ヤツガシラが見え隠れするようになる。
ヤツガシラは白軍中尉に恋をしているらしい、という噂が立つ。
私が町田純から聞いて、覚えているのはこれだけです。
白軍は、皇帝側の反革命軍。
この中尉は後に黒海を渡り、「イスタンブールの占いウサギ」でヤンと出合い、
ロシアへの望郷を断ち切れずに戻っていくあの中尉です。
ヤツガシラはパレスチナからヨーロッパ、ロシアを旅する美しい渡り鳥です。
「占いウサギ」の続編も以前考えていました。
「イスタンブールのフーセンウサギ」というタイトル。
ウサギは風船売りになっています。葬式の時に黒い風船を売りに来る。
もちろん普通の風船も売っていますけどネ。
そして、埋葬の時、参列者(イスラムです)はウサギから買わされた風船を空に放つのです。
黒い風船はイスタンブールのはずれの墓地から、灰色の空を舞う。
ボスフォラス海峡へ向かうのもある。
ヤンもバイトで一緒に売ります。
トロツキーもちょっと顔を出します。イスタンブールに亡命していた。軟禁だったかな。
註( by Mariko Machida)
イスタンブール沖のプリンキポ島に亡命中のトロツキーは、特に制約も受けずに暮らしていたようです。
トロツキーが赤軍の指導者だった時、トルコ独立のためにヨーロッパ列強と戦っていたアタチュルクに
武器の支援を行いました。これに恩義を感じたアタチュルクがトロツキーの自由を保証したのでしょう。
ただ、当時イスタンブール市内には白軍(反革命)側の亡命者が多数いたので、市中にはほとんど行きませんでした。
自由に市内を歩きまわることが出来なかったという意味では、「軟禁だったかな」と言えるかもしれません。