ボクは小さい頃、父の金眼銀目の弟子に、サズーを習ったことがある。
控え目だが、ときに高らかに歌い上げる乾いた響きが大好きだ。
彼はいくつか物悲しい望郷の歌と、クルディスタンへ捧げる激烈な愛
の歌を教えてくれた。
ジャン、ジャン、ジャラ、ジャラ……ジャン、ジャン、ジャラ、
ジャラ……
私は歌う
失われた故郷を思って涙を流す人々のために
遠く離れて2度と再び会うことのない親しい者たちのために
幸せな時を共に過ごした友人たちのために
今は無い私たちの村を
クルディスタンの香りの記憶を
……
ジャン、ジャン、ジャラ、ジャラ……ジャン、ジャン、ジャラ、
ジャラ、ジャララ、ララ!
ずっと後に、パレスチナ出身のやさしい目をしたおじさんからは、
ウードで弾くオレンジとミルトゥス(天人花)の香りを合わせもった曲
を教わった。
子供の頃を照らしだして
月が昇ったよ
子供の頃 それは丘の連なり
スズメが集まり 籠にはバラの花
それを月が照らしている
子供の頃 それは海岸に傾いた松の木
夢の中では そのこずえに
たくさんの謎につつまれた星があった
たくさんのものを奪われた子供の頃
時には本やランプのある部屋から
時には牢獄へ そして釈放
時には秘密警察に囲まれた街での
偽りの生活
……