|
そして今、ボクらの目の前に大きな河がゆったりと流れている。 エンジンを切って、風防眼鏡をおでこに上げ、赤ネコはフッとため息をつく。 青ネコはサイドカーから降りて、河の土手に向かって歩いている。 「なんか懐かしくない?」 立ち止まった青ネコが河を見渡しながら赤ネコに声をかける。 「別に」 と赤ネコはまだオートバイにまたがったまま。 |
|
「ソーだ」青ネコはチャプチャプ水に入っていく。 「アッ」 …ボクらは本当に世界を愛しているのかナ…ゆったりと漂いながら、青ネコはフト考える。 翡翠(ひすい)のような緑の小石、瑪瑙(めのう)のような縞の入った小石、そして石英のように透き通った小石の列がずうっと先まで。 すーっと水の天井を青ネコが通り過ぎる。 「不思議な生き物だ」カジカはつぶやく。 |
|
|
|
* 愛すること、---- 歩くこと、---- 雷鳴はまだ鳴りやまない、 ----- ボリース・パステルナーク「わが妹人生」(工藤正廣訳)より |