草原に横たわって
 
 [ヤンの手記]より

 草原に横たわって空を見た時、ボクは大人になっていたことに気付いた。
 ボクは一人。ボクにとっての世界も、ボクのまわりのこの世界ただ一つ。
 草原は、6月の草いきれの中で思いっきりの呼吸をしていた。

 立ち上がって、草原の草の中を進み、また進んだ。
 どこに寝転んでも同じ空がボクの上一杯に拡がり、
 同じ雲が少しずつ形を変えながら動いていた。
 なぜか寂しく哀しかった。
 この感情はこの後も度々ボクの横を通りすぎていくことになる。 

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