オマールの壁
2016.4.9
[重要]と赤いスタンプが押された封書を受けとった。
パレスチナの子どもの里親運動事務局からだ。レバノンの難民キャンプで暮らす里子のマラクはこの1月で19歳。支援終了の通知? いや、進学希望で支援延長の要請かもしれない。開封する。
「ITと会計の職業訓練を終了して自立可能になったので支援終了」との通知だった。成績優秀で進学したかったけれど、やはり月5000円弱の支援では難しかったのだろう。
数日後、マラクから初めての手紙が届いた。彼女とは5年間、birthday card とnew year cardをどうにか出すだけで終わってしまった。純を亡くした私は心の余裕がなかったし、父親を病気で失った直後に母親も事故で亡くしたマラクに書く言葉が見つからなかった。マラクはなおさらだったことだろう。
「まだ職は見つからない」、と手紙にあった。レバノンで暮らすパレスチナ難民には70以上もの職業に就くことが禁じられている。就くことが出来るのは単純労働だけだ。難民になってから70年近く、国連で認められている故郷への帰還権もイスラエルは拒否している。今はイスラエルになってしまったマラクの祖父母たちの故郷に帰ることもできない。

パレスチナ自治区に暮らすパレスチナ人もイスラエルの占領下、隔離壁に囲まれて過酷な状況が続いている。町田純は「閣下とジャック」で、”相手を壁で囲むことは、自分たちも壁で囲まれることだ”と皮肉ったが、現状はパレスチナ人に一方的に厳しいだけだ。
そんな状況を描いた映画が公開される。パレスチナ映画「オマールの壁」。
http://www.uplink.co.jp/movie/2016/42939 
絶望的な映画だ。しかし、是非見ていただきたい。パレスチナは美しい。
同じ監督の「パラダイス・ナウ」も再上映される。
http://www.uplink.co.jp/movie/2016/43495
DVDレンタルでも見ることが出来る。こちらも是非!

悩んだ末に、里子支援を続けることにした。次の里子はシリアで暮らしていたパレスチナ難民が再び難民となってレバノンに逃れてきた、そんな子になるかもしれない。日本でも子供の貧困が問題になっている時、「パレスチナどころではないだろう」と純に言われるような気がする。世界中、格差と不平等。
                       
     by Mariko Machida
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