3. Sergei Kuriokhin

　　'Liverpool'

ソビエト連邦の末期、でも、ソ連が崩壊するなど思いもよらなかった頃、
ゴルバチョフのペレストロイカが始まる前、文学、音楽、美術、映画 … どのジャンルでも、とてつもなく面白いこと、すごいことが起っていた … らしい。

音楽では、まず、セルゲイ・クリョーヒン。社会主義の公認芸術の枠に収まらないから、当然、レコーディングもコンサートも許可されない。でも、人の耳から耳へ伝わって、伝わって、世界中に知られるようになった。

前衛的なジャズピアニスト、音楽のコラージュ、ミュージック・パフォーマンスの先駆 … ジャンルを越えて幅広い活躍をするミュージシャンとして。

多彩な作品の中で、最もリリカルな演奏は、多分、”リバプール”。
ロシアン・ロマンスそのものの、切ないほど美しいピアノから始まって、…ロシア人のピアノの音の美しさはどこから来るのだろう… でも、何か変なことをしている。（残念ながら見えない）

自由自在な音楽性に、チャメッ気、イタズラ、洒落ッ気を織りまぜて、… それでも、とにかく美しく格調高いのだ。

Text by Mriko Machida 2003.8