〈2〉

 軍港でもあるナホトカは美しい町らしいが、その頃は外国人には開放されていなくて、上陸すると鉄道駅に直行。そこからハバロフスクまでシベリヤ鉄道をほんの少し体験する。車窓を流れる白樺の木々や草地の風景は「ヤンのシリーズ」にも反映されているはずだ。小さな停車駅に並ぶ物売りのおばさんたちや、ヒモにつながれていない犬たちもこの旅で目にした。そして、その記憶は「草原の祝祭」の記述に繋がる。人懐っこいムク犬がこちらを向いて座っている。エサを期待しているのかな? ごめんね、ツアー客は手許に食べ物を持っていないのだよ。
 アムール川のほとりのハバロフスクは、まだ田舎臭さを残す極東の大きな都会だった。夏はかなり蒸し暑い。
 
 ハバロフスクからモスクワまでは飛行機。離陸の時、純は緊張して拳を固く握りしめている。飛行機が高度を上げて水平飛行に移ると、やっと拳を開く。手のひらは汗びっしょりになっている。この拳と汗は、この後、離陸・着陸のたびに繰り返された。
シベリア鉄道の車窓から↑↓
シベリア鉄道の車両 首輪のない犬
物売りのおばさんたち
〈3〉に続く