私たちの上で大地は閉じている
パレスチナの詩人マフムード・ダルウィーシュ(1941~2008)の詩
私たちの上で大地は閉じている      マフムード・ダルウィーシュ

大地は私たちにむかって閉じてきて
私たちを最後の道に押しやり
私たちはばらばらになって通って行く。
大地は私たちを締めつける。
私たちが大地の小麦であれば
死んでもふたたび生き返ることが出来るだろう。
大地が自分たちの母であれば
優しくしてくれるだろう。
自分たちが岩の上に描かれた絵であれば
夢が鏡のように運んでくれるだろう。
魂の最後の防衛で、私たちの最後の者によって
殺される人々の顔を私たちは見た
私たちは彼らの子供たちの祭日に涙した。
私たちはこの最後の空間の窓から私たちの子供たちを
投げだす人々の顔を見た。
私たちの星が鏡をかざしてくれるだろう。
最後の辺境が尽きた後、私たちはどこの行けばよいのか?
最後の空が尽きた後、鳥はどこに飛んで行けばよいのか?
最後の風のそよぎが尽きた後、草木はどこで眠ればよいのか?
私たちは自分たちの名前を深紅の蒸気で書くだろう。
私たちは歌の手を切り落とし、自分たちの肉で仕上げる。
私たちはここで死ぬだろう、ここ最後の道で。
ここに、そして、ここに、私たちの血はそのオリーブの木を植えるだろう。

この詩はまさに今のガザの惨状を描写している。
しかし、この詩は1982年のイスラエルのベイルート侵攻の時に作られた。当時レバノンのベイルートに拠点を置いていたPLO(パレスチナ解放機構)はイスラエルの猛攻撃でベイルートを去ることになる。キリスト教マロン派民兵ファランジストはイスラエルの支援の下で、ベイルートのサブラとシャティーラのパレスチナ難民キャンプでパレスチナ難民の虐殺を行った。
当時ベイルートにいたマフムード・ダルウィーシュはその惨状を目の当たりにしてこの詩を作った。
パレスチナの人々はイスラエル建国(1948年)から、虐殺、追放、侵攻、占領、壁による分断、ユダヤ人入植地のための土地の収奪、家屋の破壊など、ずっとイスラエルの暴力に晒されている。

マフムード・ダルウィーシュを追悼して、2013年にパレスチナのウード奏者Le Trio Joubranがパリで開いたコンサート。ダルウィーシュ自身の詩の朗読が流される。舞台後方ではパレスチナ伝統のダンス・ダブケ。
芸術的主張 目次        

top: ネコのヤンと愉快な仲間たち