5.ガラタ橋の物乞いカラス

 ガラタ橋の上にカラスの物乞いが立っていた。ボクは硬貨を一枚あげた。
 カラスは何も言わずに汚れた翼で受けとった。

 次の日、カラスは5羽に増えていた。ボクは3パラしか持ち合わせがない。
 1パラ硬貨が3枚。こんなときどうすればよいのか?
 1羽おきにあげる。

 翌日は その間の2羽にあげた。

 その晩フト考え悩む。しかし、カラスの並ぶ順が入れかわっていたら……


 ボクは魚の嫌いなカモメに尋ねた。
 カモメは、物乞いカラスが次々とカラスのぬいぐるみ人形を片付けて、くるくると羽毛フトン
 のように丸めて大きな背負い(しょい)カゴに詰めて立ち去るのを見たと言った。
 本物は1羽だったのだと思って、近付いて1パラあげようとした。
 するとカラスは次々と分裂し増殖した。
 一番後ろの本物のカラスは、右に2羽、左に1羽と真ん中に1羽置いてから、自分は一番左に
 立ったと言う。

 次の日は、フツーの大きさのカラスとバカでかいカラスが立っていた。
 みんなはフツーの方がより小さく貧相に見えるので、そっちに施しを与える。
 ボクは大ガラスの皿に一枚入れた すると、大ガラスは「アリガタイんだがネ」と、
 一言いった。

 その晩ボクは、橋にズラッと並んで端から端まで埋めつくす
 カラスの一列横隊の夢でウナされた。

 次の日、なすのジャムを食べた。
 その黒くて細長い形はカラスを連想させる。
 ちょっと躊躇したけれど、食べてみるとバナナのような味がした。
 カラスのようではなかった、たぶん。

 カラスみたいな、でもカラスではなく茄子のジャム

小さな茄子  300g
砂糖     300g
水      200cc
レモン汁   20cc

 茄子は、へたを取り皮をむいて水につけておく。
 なべに水と砂糖を入れ、かき混ぜながら沸騰させる。
 火を弱めて、水を切った茄子とレモン汁を加える。
 シロップが濃くなって、茄子が黒っぽくなったら火を止める。

 スライスしたフランスパンに、塩味の利いたフェタチーズと一緒に載せて
 食べるのがオススメ。

6. 占いウサギとトロツキー 
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